カムシャフトの棺

他愛ない文学的な、交換日記です。

006.大遅刻(尾崎末)

こんばんは。
いやぁ、遅い時間にごめんなさいね。
やっと久々に、日記を更新しました。

あれから君はどうですか?
まだ「ひどい」達にいじめられていますか?
もしそうならいつでも言ってください。
基本的には話を聞くくらいしか能の無い奴ですが、最悪の場合は借金してでも駆け付けます。そしたらまた、ベランダで毛布にくるまりながらレモンティーでも飲んで話し合いましょう。季節を追う必要などありません。寧ろ季節が私たちを追いかけてきてほしいものです。

さて、こちらの最近は妙なことがよく起こっています。
一番困っているのは絶賛宗教勧誘され中な事ですかね。
あとは些末事ですが、職場の上司に滅茶苦茶イライラしてたりします。
そして文フリの原稿が危ういです。
最悪、またコピ本を配る羽目になりそうです。

色々バタバタしていますが、私はそれなりに元気です。
絵を描いたり、ゲーム作ったり、小説書いたり。
なんだかんだ充実している。

あ! それから誕生日ありがとう!
君がくれた本は仕事の休憩の合間に読んでます。久々の読書なのでリハビリもかねて。
本を読むのは良いね。とても感化されます。
街並みの写真集もお気に入りです。思い出したときにパラりとめくって楽しんでます。
ただ時計の方はごめんね、置き場所が無くて未だに机の上に無造作に置かれています。

さて、余り書くことが無いけれど、今回は私も君に倣って弔いをしようと思います。
文フリに持っていく予定(未定)の物語の一部です。

「別にね、遅く帰ってくることを咎めようとは思っていないけど」
 言いながら左右にわずかに揺れる彼の赤いヤカンである頭の中から、トポンと水が揺れる音がした。注ぎ口からうっすらと湯気を燻らせているあたり、彼が怒っているのは分かった。
「ごめんなさいブラウンさん」
 カーリーは栗色の髪を揺らして謝ってから、肩をすくめて見せる。
「でも朝ごはんには間に合ったのよ、許してよ」
 少し拗ねたようなカーリーの言葉に、ブラウンはやや湯気を濃くしながら首を振った。
「カーリー。僕がいつも言っていることは知っているだろう」
北の湖には近付かない」
「それじゃない」
「畑のマンドラゴラは勝手に抜かない」
「そっちでもない」
「……ブラウンさんが寝るのより遅く帰らない」
「そうそれだ」
 ブラウンがカーリーの額に、白手袋で包まれた人差し指を突き立てる。ブラウンの頭の中の水がタポンと揺れる音が聞こえた。
「いいかい、カーリー。一緒に暮らす時の条件は、僕の言いつけを守ることの筈だろう」
「守ってるわ」
「遅く帰らないこと以外はね」
 カーリーの額を軽く指で弾いてから、ブラウンはかがめていた腰をあげて肩を落とす。その仕草がため息をつくのと同じ意味を持つことをカーリーは知っている。
「それで? 今度は一体なんのモンスターを追っていたんだい」
 どこか諦めたような口調でかけられたブラウンの問いに、カーリーはパッと顔を輝かせた。
「そうなのブラウンさん! ちょっと待ってて!」
 そう言ってカーリーは部屋を飛び出すと、すぐに慌ただしく戻ってきた。
 その手には色鮮やかな花をその体に生やした若草色の兎を二頭、抱え持っている。
「おや、ハナウサギだね。もうそんな時期なのか」
「でしょでしょ! 美味しそうでしょう!」
「……可愛いでない辺り、流石狩猟民族というか。まあいいさ、それじゃあ今日のお昼はハナウサギを使おう」
「やった! 手伝うわ!」
 ハナウサギを受け取り歩き出したブラウンの後を、カーリーも追う。食事を作るのはいつも二人で。それが彼らの取り決め事の一つであった。

 
文フリ頑張ろうね。