これは過去の君にあてた日記です。
君には必要なくなっているかもしれませんが、それならそれで良いのです。
ただ一人、互いに心を分け合える友人が幸せなら。
さて、君は今どういう気持ちでいるでしょうか。
君への手紙を放り出して久しい私ですが、これでも書こうという気持ちはありました。
嘘じゃないよ。ほんと。
パスワード忘れていただけです。
鍵を見つけられず家の前で途方に暮れる小学生と同じです。
話は変わるが、私は君の事を実はよく知らない。
誕生日すら未だにあやふやで、しばらく会わないせいか君の顔も結構朧気です。
たった二年ではありましたが同じ屋根の下にいたというのに薄情なものです。
申し訳ない。
私が君の事でわかる事といえば多くない。
創作をしている事。
美しいものを愛している事。
二次元では長髪のキャラを好きになる傾向がある事。
そのキャラが遊佐浩二の声ならなお良い事。
ガネーシャ像(だったか?)を衝動買いした事。
友人を心から慈しみ誕生日を大切にしてくれる事。
時折酷く動揺し戸惑い人生(もしくはそれに類似する何か)について悩む事。
君は弱いように見えて強いのに、その実、やはり弱い。
弱いっていうのは体力とかそういう類ではなく、精神や心の事なんだけど。
余りこう、断じる様な論調は良くないし、君を不快にさせてしまう。
もう少し言い方を変えよう。
君の心はガラスでできているように見える。
でも実際にはダイヤモンドで出来ていて、滅多な事では傷もつかない。
しかしそのダイヤモンドには、何か所かに穴があいている。
そのあいた穴から見える柔らかい部分を、時々何かが傷つけている。
私には君がそんな風に見える。
ねえ、もし君が、昨日辛くなかった事が今日辛くなってしまったら思い出して。
昨日辛くなかった事はいつも君の心を狙っている。
だから君の心の穴を探してウロウロしている。
やつらはその穴を見つけたらひょいっと入り込んできて、今日辛い事に変わる。
あいつらは狡猾だ。いつだって隙を窺っている。
しかも離れて行ってくれない。
だから君が毎日辛い思いをしていて、「ひどい」毎日と思っているのなら、
それはきっと「ひどい」達がずる賢いからだ。
君には何の落ち度もない。
誰が何と言おうと、君は一つも悪くない。
あまり良い言葉じゃなくてごめんね。
君がいつも悩んでいるのは、近くで見てきたので重々承知だ。
君は、私を信用して時々心の穴を見せてくれるよね。
本当は私がそれを隠す手伝いができれば良いけれど、それが上手く行かない。
とても歯がゆく思う。
私に優しさが足りないのが原因なのは理解している。
もっと自分の事を考えるように、君の事も考えられたら良いと思っている。
嘘じゃないよ。ほんと。
これは過去の君にあてた手紙だけど、未来の君が受け取る事になると思う。
遅くなってごめんね。
とりあえずはけつばん。
P.S.
私は「けつばん」という響きにロマンを感じる。
使われずこっそり仕込まれたデータ。
誰かに解読されるのを待つだけの、いやそもそも解読される事を前提にしていない、
ただそこに「ある」だけの存在。
これはそういうものです。
まあでも願わくば、君がいつか解読してくれることを願います。